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と、主人は、長男への何倍もの肩入れが始まりました。私から見ても、大変な力の入れようでした。視覚を通した知力の育成。とは言っても、むずかしいことではありません。具体的には玩具類を揃えることから始めました。動く仕掛けのあるもの、積木やパズル形式の知的な構成力を養うもの。それに絵本類、とび出す絵本から様々なものを数多く与え、いろいろなものと出会いをつくりました。その間、二男は、幼稚園入園の適期を迎えましたが、長男のために、二男には、「すまない」と思いながらも見合わせました。二年保育ぐらいを考えていましたが、長男の入学するまで延期し、とうとう一年保育になりました。長男に言葉がないため、話のやりとりに乏しい二男は、他の二年保育や三年保育の園児に比し、話す力も劣り、あらゆる面で言動から受ける感じが、知恵おくれに思われました。
主人の、「自然に淘汰される」と言っていたことへの疑念と、二男への肩入れの不足していたことへの後悔の念が、ひしひしと身をさいなみました。
ところが、一日一日と幼稚園での生活が重なるにつれて、今まで詰まっていた水がパイプの栓がとれてほとばしり出るように、ぐんぐんと言動にも活力が生まれ、二男の日常の行動にも生気がみなぎり、交友の輪が広がり快活になりました。
よく、「環境が人をつくる」と申しますが、ほんとうに、触れる環境によって人はできあがって行くものだ、とつくづく思いました。と同時に、教育は慌てることはないと知り、とるに

 

 

 

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